認知行動療法

目次

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項目 概要
抑うつのパラドックス 人の考え方によって気分が変化するとどのようなことが起きるか?
認知的概念化 人には思考の癖がある.偏った思考やイメージは自動思考によるもの
自己観察 自分自身の自動思考の癖を観察することによって偏った思考を修正することができる
思考と情緒 思考によって異なる情緒
うつ病の認知療法 うつ病に対する認知療法
スキーマ療法 スキーマ療法と認知行動療法の違いや特徴について概説

2 はじめに

認知行動療法を説明するのは大変に難しいことであるが、ここでは認知行動療法の概要について述べる。

3 認知行動療法とは (congnitive behavioral therapy ; CBT)

アローン・ベックは 1960年代 に新たな心理療法を開発し、認知療法 (cognitive therapy) と名付けた。現在の認知行動療法とほぼ同義であるので、ここでは、認知行動療法という用語に統一する。

  • 認知行動療法は、思考や行動を修正することにより、
  • 患者が抱えている問題や悩みを解決する

 
 

認知行動療法は、個々の患者の信念および行動パターンを理解し、概念化したものに基づいて進められる。治療者は患者の認知的変化を引き起こすために様々な手立てを探索し、認知的変化が患者の感情や行動にしっかりとした変化をもたらすよう工夫する。

 
 

3.1 認知療法 (congnitive therapy ; CT) と行動療法 (behavioral therapy ; BT)

認知療法は、認知行動療法の中で認知を中心に扱うものとしていたが、近年では認知療法とされるものにおいても行動的技法を多く用いることから、認知行動療法と実質的な差はないとされている。ここでも同じ意味として取り扱う。

3.2 自動思考とスキーマ

私たちは周囲の状況や自分の状態をどのように認識するかによって自分自身の気持ちや気分が変わってくることを知っている。認知行動療法では、表層的な自動思考と深層にあるスキーマの2つのレベルを仮定する。

3.2.1 自動思考

ある状況で自然にそして自動的に沸きあがってくる思考やイメージを言う。その時々の認知のあり方が反映される。

3.2.2 スキーマ

その人の基本的な人生観や人間観であり、生得的要因と環境要因の影響を受けながらそれまでに体験した事柄に基づいて形成される。気付かないままに心の底に存在している個人的な思い込みである。基本的な考え方は幼少期に確立され、スキーマ、中核概念を持つようになる。このような考え方に基づいて、普段の生活での考え方やルールが出来上がってくる。これを条件信念という。
 
 

  • もし~ならば~である
  • ~であるべき
  • ~べきでない

 
 
これらの条件信念によって普段の生活の中で自動的に浮かび上がる自動思考を生み出す。
 
 

3.3 アプローチ方法

認知行動療法には以下のように多くのアプローチ方法がある。
 
 

  • 論理上動行動療法
  • 弁証的行動療法
  • 問題解決療法
  • アクセプタンス&コミットメントセラピー
  • 曝露療法
  • 認知処理療法
  • 認知行動分析システム精神療法
  • 行動活性化
  • 認知行動変容

 
 
ベックの認知行動療法はこれらのアプローチの技法を統合的に用いる。

3.4 適用

3.4.1

  • 認知行動療法は多様な人々に適用可能
  • 教育レベルを問わない
  • 収入を問わない
  • 文化的背景を問わない

 
 

3.4.2

  • プライマリケア
  • 医療機関
  • 職業訓練
  • 刑務所
  • カップル
  • 家族
  • 職場

3.5 効果

これまでの研究から以下の障害に対して効果が高いことが示されている。

精神医学的障害 心理学的な問題 医学的な問題における心理学的要因
大うつ病性障害 カップルの問題 慢性腰痛
老年性うつ病 家族の問題 鎌状赤血球症による痛み
全般性不安障害 病的賭博 偏頭痛
老年性不安 複雑性悲嘆 耳鳴り
広場恐怖 介護者のストレス 癌による痛み
社交恐怖 怒りと敵意の問題 身体表現性障害
強迫性障害   過敏性腸症候群
後遺障害   慢性疲労症候群
物質乱用   リウマチ性疾患による痛み
注意欠如/多動性障害   勃起不全
健康不安   不眠症
身体醜形障害   病的肥満
摂食障害   外陰部疼痛症
パーソナリティ障害   高血圧症
性犯罪   湾岸戦争症候群
習慣の障害    
双極性障害    
統合失調症    

3.6 参考

4 認知行動療法の基本原則

すべてのケースに共通する原則を以下に示す。

4.1 認知行動療法では、認知的視点に基づき、患者の抱える問題を絶え間なく定式化 (formulation) し、個々の患者の概念化 (conceptualization) を行う。

4.2 認知行動療法は、確固たる治療同盟を重視する。

4.3 認知行動療法は、共同作業と治療への積極的関与を重視する。

4.4 認知行動療法は、問題に焦点を当て、目標志向的である。

4.5 認知行動療法は、まず「今・ここ」を強調する。

4.6 認知行動療法は心理的教育であり、患者が自分自身の治療者となることを目指す。

4.7 認知行動療法は、治療の回数や期間を制約のあるものとして考える。

4.8 認知行動療法ではセッションを構造化する。

4.9 認知行動療法は、患者自らの非機能的な思考や信念を同定・評価したり、それらの思考や信念に対応したりできるようになるよう手助けする。

4.10 認知行動療法は、思考、気分、行動に変化を起こすために多様な技法を活用する。

5 CT で強調される認知の歪みの定義

項目 定義
選択的抽象化 入手できる情報の一部分にだけ目を向けて結論を引き出す
恣意的推論 相反する根拠があるにも関わらず、または根拠が無いのに結論を出す
過剰な一般化 一つまたは複数の独立した出来事について出した結論を非論理的に拡張して多岐に渡る機能領域にまで拡張する
拡大解釈と過小評価 属性、出来事または感覚の意味を拡張、または軽視してとらえる
自己関連付け 自分との関連性を裏付ける根拠がきわめて乏しい、あるいは根拠がまったくない場合に関係のない出来事と自分自身を関連付ける
完全主義的思考 自分自身や個人的経験、またはそのほかの事項に関する判断が、二つのカテゴリのいずれかに当てはめる

6 認知療法の概要

 
 

  • CBT の特徴として、① 心を認知、感情、行動、身体 に分け、これらがどのように関係しあっているかを知り、問題となるパターンに気付くように、新しいパターンが作られるように援助する。
  • 治療者は協同して作業を行い、問題解決法を見つけ出す役割を担う。
  • 患者を理解するとともに、認知的概念化、定式化を行う。

 
 
認知行動療法とは、患者の特に誤った考え方と不適切な思い込み (非機能的思考) を描写し、その妥当性を検討し、変容するために用いられるさまざまな技法群をさしている。
 
 

  • 一般的に認知の存在を気付かせる
  • 一般的に認知が感情と行動に影響を及ぼしていることを気付かせる
  • 患者の最近の経験の中から、認知と行動に何らかの関係があったと思われるエピソードを取り上げ、認知と行動が関係していることを気付かせる
  • 患者の中に自動的な思考パターンが存在していることを気付かせる
  • 否定的で自動化された思考をモニターする
  • 歪んだ自動思考にあてはまる、あるいは反する証拠を調べることによって、自動的な思考パターンの現実性、妥当性を吟味する
  • 歪んだ認知をより現実的な説明に置き換えることによって新しい解決法、いつもとは異なった妥当な解決法を探索する 

 
 

6.1 認知療法

  1. 問題志向の治療法
  2. 短期間で実施
  3. 1回50分程度
  4. 1週間~2週間
  5. 5~20回程度のセッションを実施
  6. 治療者と患者の関係作り
  7. 問題の査定
  8. 心理教育と治療計画
  9. ワークをとおして認知、行動へのはたらきかけ
  10. まとめ、再発防止

 
 

6.2 具体的な認知療法の手法

  • 問題志向を重視
  • 事例の個別的な概念化
  • 協同的-経験主義的治療関係
  • ソクラス的質問法
  • 構造化、心理教育およびリハーサルを利用して学習意欲を高める
  • 自動志向の誘発と修正
  • スキーマの同定
  • スキーマを変化させる
  • 絶望、自滅的行動および回避のパターンを逆転させるための行動的手法
  • 再発防止のための CBT スキルの構築

7 引用文献

アーロン・T・ベック. and 大野 裕. (1990). 認知療法 - 精神療法の新しい発展 (認知療法シリーズ), 岩崎学術出版社.

石丸 昌彦. and 広瀬宏之 (2016). 精神医学特論 (放送大学大学院教材), 放送大学教育振興会.
 
 

8 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
 
 

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  • 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
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著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2017-03-22 水 13:11

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