うつ病 と コーヒー

目次

1 はじめに

コーヒー・紅茶・緑茶・タバコ をはじめとする嗜好品について うつ病 に対してどのような影響があるのかを3回にわたって連載していく。今回は、コーヒーが うつ病 に及ぼす影響についてまとめた。
 
うつ病 の 発症から寛解 までの道のり、そして、うつ病 を 二度と再発させないための工夫などについても今後書いていく予定でいます。
この連載記事をとおして、うつ病 患者さん や 双極性障害 の患者さん に少しでも役に立てられれば幸いです。
 
うつ病 の詳細については、こちら を参照。
 

2 コーヒーの歴史

私たちが普通に飲んでいる一杯のコーヒー。このコーヒーに隠された民族・宗教・医学・薬学・農業 などをはじめさまざまな歴史があることに驚かされる。

2.1 コーヒーの発祥

コーヒー発祥の地は、アフリカ エチオピアのアビシニア高原であると言われており、原産種は学名[コヒア・アラビカ]と呼ばれている。同じアフリカの中で他にコンゴを原産とするロブスタ種 と リベリアを原産とする リベリア種の二つがあり、これらアフリカ原産の3つのコーヒー種を「コーヒー3大原種」という。これらの内、最も生産量が多いのがアラビカである。およそ、生産量の70%がアラビカ種であると言われている。

2.2 コーヒーの医学的利用

コーヒーは、エチオピアから紅海を渡って10世紀頃にアラビアに伝来したとされている。アラビアでは、コーヒーは薬として使われていた。アラビアの医師であるラーゼスはコーヒーの薬理効果を認め、消化作用、利尿作用があることを文献に残しており、コーヒーが薬として有効でありコーヒーが薬の側面を持っていることを明らかにした。

2.3 コーヒーの普及

13世紀に入るとコーヒーは豆を炒って煮出して飲むようになり、15世紀にはイスラム全土にコーヒーが伝来したと言われている。しかし、当時はイスラム教寺院だけでコーヒーを飲用し、秘薬”として扱われていた。その後、16世紀に入ると、エジプト、シリア、イラン、トルコへコーヒーが伝来したとされています。このように中東地域を中心にコーヒーが広まったのが、15~16世紀頃でヨーロッパやアメリカにコーヒーが伝来したのは17世紀とされている。日本にコーヒーが伝来したのは1780年とされているが、当時は茶の習慣によりコーヒーは庶民に受け入られなかった。日本でのコーヒーの輸入が盛んになったのは文明開化であるとされている。

3 コーヒーの成分

コーヒー豆に含まれる主な成分を以下の図に示す。
コーヒー豆には糖類、脂質、たんぱく質の他、クロロゲン酸、カフェイン、トリゴネリン、など特徴的な成分が含まれているが、その成分は2,000種類以上にも及ぶという。1 その成分のうち明らかになっているのが、カフェインであり、その他の成分については未知であるとさえ言われている。
 

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出展:全日本コーヒー協会

 

4 医学的効果と影響

コーヒーの医学的効果に関しては、さまざまな研究があるが、実験方法や条件の違いにより必ずしも一致した見解が得られていない点もあるが、近年の研究によれば以下のような効果があるとされている。

4.1 コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について

国立がん研究センター によると、 コーヒーを摂取する群 において、 全死亡リスク及び心疾患、脳血管疾患及び呼吸器疾患による死亡リスクが減少 するという研究結果を発表した。2

4.2 1日のコーヒー摂取量は3~4杯以内が適切

コーヒーにはカフェインが含まれており、 コーヒーの摂取量1日に3~4杯が適切 であるという。それ以上はカフェインの 過剰摂取 となり胎児への影響やその他の影響があるかもしれない。
 

  1. Caffeine

Effects of caffeine on the foetus are not well established yet. Tea, cocoa and cola-type drinks contain about the same amount of caffeine while coffee contains about twice as much caffeine. Try to limit your coffee intake to 3-4 cups a day. 3 

引用: World HEALTH ORGANIZAION

 

4.3 カフェインの多量摂取(コーヒーの飲み過ぎ)

大量のカフェイン摂取は、睡眠に悪影響を与え、不安を誘発する。
 

カフェイン睡眠に悪影響 を及ぼすことはよく知られている。例えば、成人では、100 mg 以上のカフェイン摂取は 睡眠潜時の延長、睡眠時間の短縮 を引き起こすことが報告されている(Landolt et al., 1995)。一方、100 mg 未満では睡眠に対して著しい影響を及ぼさないという報告もある(Dorfman and Jarvik, 1970)。しかし、感受性の個人差を考慮すると、より少量のカフェインでも、睡眠に悪影響が生じると考えるべきである。 大量(400~500 mg 以上)のカフェイン は、 不安障害患者 だけでなく、 健常者 でも 不安を誘発する ことが知られている(Nawrot et al., 2003; Childs and de Wit, 2006)。
Nickell and Uhde(1994)は、低用量のカフェイン(3 mg/kg:200 mg 相当)でも不安を誘発しうることを報告している 4
 
引用: 日常生活の中におけるカフェイン摂取 --作用機序と安全性評価-

 

4.4 ホットコーヒーは65℃以下で飲むのがよい

IARC(国際がん研究機関)は、非常に熱い飲み物(65℃以上)について、中国、イラン、トルコ、南米など、茶やマテ茶を70℃以上の高温で飲用する地域における疫学研究の結果、 飲む温度が高くなる(65℃以上)食道がんの発生リスクが増加 したこと。動物実験の結果、65℃以上の水をラット・マウスに投与すると食道がんが発生したことから、ヒトと実験動物の発がんについて限られた証拠があるとし、「グループ2A」(人に対しておそらく発がん性がある)に分類している。
 

(参考)紹介されている、お茶やコーヒーを淹れる際の湯の温度
ただし、急須やティーポットなどから湯飲みやカップに注ぐと、これよりも温度は下がります。
 

飲み物の種類 湯の温度
煎茶(上級) 70℃ 1)
煎茶(中級) 80~90℃ 1)
玉露 50~60℃ 1)
番茶、ほうじ茶、紅茶 100℃(熱湯) 1) 2)
コーヒー(レギュラー) 90~95℃ 3)

 
一方で、多くの国では、茶や コーヒーは主に65℃以下で飲用 されているとも述べています。
 
参照情報

  1. 日本茶インストラクター協会ウェブサイト https://www.nihoncha-inst.com/basic/basic5.html (外部リンク)
  2. 日本紅茶協会ウェブサイト http://www.tea-a.gr.jp/make_tea/ (外部リンク)
  3. 全米コーヒー協会(National Coffee Association USA)ウェブサイト http://www.ncausa.org/About-Coffee/How-to-Brew-Coffee (外部リンク)

 
出展:農林水産省

 

4.5 ストレスの低減化

コーヒーに含まれている カフェイン精神的ストレスを緩和する 作用がある。抗酸化活性を有するコーヒーには、ストレスによって生じる活性酸素を消去する働きが期待できるとされている。5

4.6 二日酔いを解消し,肝硬変を予防する

カフェイン肝臓や腎臓の働きを活発 にし、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解を早め 利尿作用 により分解物の排出が促進される。また、1日にコーヒーを 2杯以上飲む人 は、 肝硬変による死亡リスクが軽減する と報告されている。6

4.7 HDL-コレステロールを上げ動脈硬化を予防

HDL-コレステロールの数値が高い人動脈硬化を起こしにくい と言われている。 コーヒーの飲用 により、 HDL-コレステロールが増加 したという報告がある。7

4.8 直腸ガンのリスクを軽減

愛知県ガンセンターによると、 1日にコーヒーを3杯以上飲む人直腸ガンになる危険度が半減する という報告がある。8

5 うつ病 と コーヒー

研究方法の違いや被験者ごとの条件の違い、コーヒー摂取量、期間などの違いもあり、必ずしも統一された明確なエビデンスはない。しかし、以下の2つのレポートは興味深い結論を得ていたのでここに掲載した。
 

5.1 うつ病 のリスクを有意に低下

コーヒーとカフェイン の摂取は、 うつ病のリスクの低下 と有意に関連していた。とするメタ分析の研究結果より明らかにした。

Coffee and caffeine consumption were significantly associated with decreased risk of depression. 9
 
引用:Coffee and caffeine consumption and depression: A meta-analysis of observational studies

 

5.2 高齢者のコーヒー摂取は うつ病 リスクを低下させる

  • ソフトドリンクなどの 甘い飲み物 10 は、コーヒーや紅茶とともに、世界中で最も消費される非アルコール飲料であり、 公衆衛生上の大きな影響を及ぼす。
  • 通常の 甘味飲料 には 多量の砂糖 が含まれており、西洋諸国では 肥満や糖尿病の流行に影響 を与えている可能性がある。
  • 近年の ダイエット飲料消費の増加傾向 も懸念される。
  • これらの飲料は、 アスパルテーム および サッカリン のような 人工甘味料 ;論争があるが、これらの物質の 潜在的な悪影響 が疑われている。
  • 一方、 コーヒー紅茶 を飲むことは、 糖尿病のリスクを低下 させることに結びついている。
  • さらに、 カフェイン とその主要な代謝産物は 脳の覚醒剤 としてよく知られており、 パーキンソン病のリスク低下 させる。
  • コーヒー飲用自殺の危険性を低下させる ことを示唆している

 

Finally, compared to nondrinkers, drinking coffee or tea without any sweetener was associated with a lower risk for depression, adding artificial sweeteners, but not sugar or honey, was associated with higher risks. Frequent consumption of sweetened beverages, especially diet drinks, may increase depression risk among older adults, whereas coffee consumption may lower the risk.11
 
引用:Sweetened Beverages, Coffee, and Tea and Depression Risk among Older US Adults.

 

6 参考文献

7 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
 
 

  • 患者様のための情報提供サイトではありません。
  • 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
  • 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。

 
 
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
 
 
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.

[2017-03-06 月] org-mode のバージョンが 8.3.6 から 9.0.5 へバージョンアップしました. 
 

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脚注:

1
岡 希太郎:コーヒー飲用による疾患予防の薬理学. (2013)
2
From the Epidemiology and Prevention Group, Research Center for Cancer Prevention and Screening, National Cancer Center, Tokyo, Japan (ES, M Inoue, NS, TS, TY, M Iwasaki, SS, and ST); the Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan (ES and M Inoue); the Department of Diabetes Research, Diabetes Research Center, National Center for Global Health and Medicine, Tokyo, Japan (MN); and Public Health, Department of Social and Environmental Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka-fu, Japan (HI). :Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. , (2015)
3
WORLD HEALTH ORGANIZATION:Healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding. (2001).
4
栗原 久:日常生活の中におけるカフェイン摂取 -作用機序と安全性評価-. (2016)
5
Pellegrini N., et al., :Total antioxidant capacity of plant foods, beverages and oils consumed in Italy assessed by three different in vitro assays. J. Nutr. 133, 2812-9 (2003).
6
Tverdal A., et al., :Coffee intake and mortality from liver cirrhosis. Ann. Epidemiol. 13, 419-23 (2003).
7
Ehrlich A., et al., :Effect of processed and non-processed coffee samples on gastric potential difference. Study with healthy male Helicobacter pylori-positive and Helicobacter pylori-negative volunteers. Arzneimittelforschung 49, 626-30 (1999).
8
Inoue M., et al.,:Tea and coffee consumption and the risk of digestive tract cancers: data from a comparative case-referent study in Japan. Cancer Causes Control 9, 209-16 (1998). Jiang Y., et al., Induction of cytotoxicity by chlorogenic acid in human oral tumor cell lines. Phytomedicine 7, 483-91 (2000).
9
Longfei Wang, Xiaoli Shen, Yili Wu, Dongfeng Zhang.:Coffee and caffeine consumption and depression: A meta-analysis of observational studies
10
訳者注:缶コーヒー、コーラー、缶ジュースなどの飲料類を指している
11
Xuguang Guo, Yikyung Park, Neal D. Freedman, Rashmi Sinha, Albert R. Hollenbeck, Aaron Blair, Honglei Chen : Sweetened Beverages, Coffee, and Tea and Depression Risk among Older US Adults

著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2017-04-01 土 20:21

Emacs 25.1.1 (Org mode 9.0.5)

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