トランスパーソナル と アントロポゾフィー (2)

目次

1 はじめに

1.1 本稿での考え方

主に心理的側面よりアプローチする方法を採用するが、他の主義・主張を否定するものではない.
特に、アイデンティティ・アプローチによる考え方、生物学的自然主義による考え方とルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーを基本に研究を進めているが、ここではアントロポゾフィーと心理的側面に着目し、 「感情」や「経験」が心身にどのような影響を及ぼすのか関連する事柄を含めて連載記事としてまとめる.

具体的には「経験」・「感覚」・「情動」・「意識」というものが、「心身」にどのような影響を与えているのかを連載記事として簡単に述べていきたい.
以下、「経験」と言う語を使っている場合には身体的経験と感情的経験の両者を含むものを指す.
 

アイデンティティ理論は、感情体験などの精神状態を神経系の状態にまで引き下げます。
感情経験のタイプ - タイプアイデンティティ理論(例えば、基本的な感情理論)は、あらゆる種類の感情経験(例えば、怒りの経験)に対して、ただ1つのタイプの神経生理学的状態があるという仮定に基づいている。
感情経験のトークン - トークンアイデンティティ理論(例えば、 James 1890、1894)は、独特の感情によって特徴付けられる感情のあらゆる実例は、独特の身体的状態と同一であると主張する
(例えば、異なる怒りの経験は異なる神経生理学的状態によって具体化される) 。
特定の脳領域における活動の増加として感情を指すといういくつかの神経科学論文における現在の傾向は、感情についてのアイデンティティの仮定に依存している。

リサフェルドマンバレット

ルドルフ・シュタイナーは、私たちの生活すべてにアントロポゾフィーという考え方を取り入れており、アントロポゾフィー医学にならって私は「アントロポゾフィー心理学」と勝手に名付けた。
「アントロポゾフィー心理学」の考え方は、既存の人間性心理学・精神分析・行動主義を補完し、神学・仏教・東洋医学・霊学をはじめ必要な領域を補完・統合すること目指した私が独自に 
考えたものである。 

2 概要

今回は、「感情」が及ぼす心身への影響について心理学・アントロポゾフィーの観点から健康と病気について、主にルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーを中心にメモする.

「心の癖」の中で影響を与えるのが、前回の記事から「自我」と「感情」が関係していることが分かった.

そこで、今回は「心の癖」に影響を与える「感情」が、アントロポゾフィーによる人間の成り立ちを考慮し、それが心身に及ぼす影響についてメモする.

3 身体の成り立ち

興奮したり過度なストレスにより「感情」が高ぶったりすると、人間の身体は反応を示す.

このときの身体の状態は、自律神経系・免疫系・内分泌系、これをまとめてホメオスタシスと言い、ホメオスタシスが不安定になる.
「感情」によって人間の身体の機能に影響を与えている.人間の身体は常に生体機能を一定に保とうする働きがある.
ところが、感情が高ぶったりすることによって、恒常性(ホメオスタシス)が崩れる.

これが短時間や短期間ならまだ良いが・・・,
長期に渡って恒常性が崩れた状態になると病気を発症する.

怒ったり・悲観したり、それが長期に渡ると人間を構成する要素にも影響を与える.
ルドルフ・シュタイナーによる人間の構成要素は以下のとおり.

物理的身体(肉体) = 生命の力 + 魂の力 + 自我

  • 生命の力:エーテル体
  • 魂の力:アストラル体

「自我」は意識と無意識の境界線上にあると以前の記事に書いた.ということは、無意識(バケツ)の中に「嫌な感情」を捨てるということ.
このバケツに捨てたモノが、アストラル体に影響する.

アストラル体は感情を表現し、感情は血液やリンパ液と関連していると言う.
怒りっぽい人は、血圧が高かったり、梗塞を起こしたり、腎炎になったりしている.
遂には、アストラル体や自我だけで無く、エーテル体にも影響を及ぼして、生命力が衰えてしまう.

4 人間の本質

上述の「心身の成り立ち」をルドルフ・シュタイナーの理論よりもう少し詳しく見てみると、人間は7つの区分より構成されていると言う.

肉体 + エーテル体 + アストラル体 + 自我(悟性魂+意識魂) +霊我(生命霊 + 霊人)

超感覚的な認識から人間を考察 しようとするなら、この認識の常道に従って、先ず 人間本性の「開示された秘密」 に眼を向けなければならない。 
感覚の働きや、その感覚に支えられた悟性の働きにとっては、肉体だけが考察の対象になるが、これは超感覚的認識の立場から言えば、人間本性の単なる一部分にすぎない。 
 
ルドルフ・シュタイナー. (2017). 神秘学概論 筑摩書房.

以下にルドルフ・シュタイナーが説く「人間の本質」に目を向ける.
以下の内容は、【神秘学(2)】 人間の本質 から抜粋したものである.

4.1 物理的身体(肉体)

人間の第一の本性である肉体.
この肉体だけを観ても問題は解明できない.

ルドルフ・シュタイナーは、「観察できないことを含めて考察することが大事である」と言う.
以下に述べる人間の本性を知るためには「修行」が必要であり誰もが観察できるものではない.

4.2 エーテル体(生命力)

  • 人間の第二の本性であるエーテル体.
  • 人間が生き続けている間、肉体の中では崩壊に抵抗している、隠された働きを観察できるのは、 高次の直感力 のみである。 
  • 開示されたものだけしか対象化できない通常の判断力もまた、隠されたものをその諸作用の中にはっきりと見てとれる。 
  • 諸作用は、人間が生きている限り鉱物の素材と力が生み出す形態の中に現れるのである。 
  • この形態は、肉体が死に至ると失われる。 
  • その後、生命の無い鉱物界の一部になる。 
  • 簡単に言えば、生命力そのものであり、エーテル体が衰えると死に向かう.
  • また、身体器官のすべてはエーテル体の流れと動きによって維持されている。

生きている間、物質の素材と力に肉体を崩壊させないように働きかけているのが「エーテル体(生命の力)」である。

4.3 アストラル体(魂の力)

  • 人間のすべての創造活動は覚醒時に行われる。 
  • 消耗した力を復活させるために、その都度繰り返し睡眠からその力を補充する。 
  • 睡眠中は行動しない。 
  • 思考活動も行わない。 
  • 睡眠中は、すべての苦しみ・悲しみ・楽しみも、意識から消えている。              
  • 眼が醒めると、意識の力が再び現れる。 
  • 眠るときと目が覚めて(没意状態)再び現れる意識は同じ意識である。 
  • 没意状態から意識を目覚めるのは、超感覚的な意識の意味では、第三の人間本性と言える。  

4.4 自我

肉体にとっての死、エーテル体にとっての眠りは、アストラル体にとっての忘却に対応する。
エーテル体にとっては、生命が固有のものであり、アストラル体にとっては意識が固有のものであり、自我にとっては想起が固有のものである。

  • 覚醒時にアストラル体と区別される。  
  • 別の本性の働きを受けている。  
  • 覚醒時、現れては消える体験だけでなく、持続的な体験をもつ。  
  • 人間の欲望や願望の誘因を体内外にも見出すことができない場合が生じる。 
  • それは、超感覚的な認識の意味で人間の「自我」の中に見出すことができる。

エーテル体がもはや保持しえなくなった肉体は崩壊する。アストラル体が明るく照らされないエーテル体は、没意識状態の中に溶け込む。 
そして、自我が過去を現在の中に取り込むので無ければ、アストラル体だけでは過去はその都度、忘却の中に沈まなければならない。

4.4.1 悟性魂

  • 自我が対象を意識するだけでなく、さらにその意識に働きかけを行うとき、自我の本性は一段高次の階段を上がる。 
  • 自我は知覚の対象からますます離れて、自分の所有しているものの中で働くようになる。 
  • それができるのが、 悟性魂 、あるいは、 心情魂 と呼ばれるものである。 

 

  • 感覚魂も悟性魂も感覚的に知覚された対象の印象を受け、それを記憶に保持する が、その時の魂は、自分の外なるものに完全に帰依している。 
  • 記憶を通して自らの所有物にしたものも魂は外から受け取ったのである。 
  • 魂はすべてを超えることができる。* 
  • さらに魂は感覚魂と悟性魂だけではなく、超感覚的な直感によりさらなる魂の行為を知ることができる。  

4.4.2 意識魂

  • 人間は自らの内に神的なものを見出すことができる。 
  • この神的なものをとおして魂の第三分肢を獲得する。 
  • アストラル体をとおして外的な意識を獲得するように自我という自らの中の神的なものを通して、自分自身についての内的な意識を獲得する。  
  • これを 意識魂 と呼ぶ。

魂は、 感覚魂・悟性魂・意識魂の三分肢から成り立つ。  
 

  • 意識魂の中で「私」を開示する力は、すべての外界の中に働く力と同じものである。 
  • その力は、体と低次の魂的部分の中では直接現れない。 
  • 段階的にその働きの結果だけが現れる。
  • その力とは、肉体の中で最も低次の現れ方をする。 
  • 次いで段階を進み悟性魂を作り出すところまで至る。 
  • 一段上がるごとに一つ一つが明らかになっていく。 

4.5 霊我

  • 人間はアストラル体にまで自己の働きかけを拡大することができる。 
  • 自我がアストラル体を支配し、自らをアストラル体の隠された本性とひとつに結びつけるのである。* 
  • 自我に支配され変化させられたアストラル体は「霊我」と呼ばれる。マナスと同じ意味である。

4.5.1 人間の基本性格

人間の基本性格は、一生を通じて持続しており、ただ事情に応じて特定の側面を表すと考えるのは一般的な考え方。

  • 人間の性格や気質も自我の在り方次第で変化する。
  • 性格や気質の変化を生じさせる働きは、エーテル体の領域に属していて、生命の領域を支配している成長力、消化力、生殖力と同質のものである。

4.5.2 生命霊

  • 「生命体」における同一の働きがそこにも作用している。 
  • この働きが生命体として現れるときには、その働きの中に人間の自我は加わっていない。 
  • 生命霊として現れるときには、自我の活動に貫かれている。 

 
☆人間の知性の進化、感情と意思の浄化、高貴化はアストラル体を霊我になで変化させる過程のことである。

4.5.3 霊人

  • 霊人 は、肉体の対極である。「アートマ」と同じ意味。 
  • 超感覚的認識をとおして霊人の存在を知ることができる。

5 病気の原因

「人間の成り立ち」のそれぞれの構成要素の働きがすべてを決める.
つまり、健康と病気は、肉体・エーテル体・アストラル体・自我・霊我のそれぞれの働きによって健康にもなり病気にもなる.

5.1 肉体

肉体に原因がある病気の場合、それは伝染病である.
物質体である肉体の病気に関して、人間の物質体と関連している自然を認識する必要がある.

5.2 自我に関係する病気

自我の別の表現は血液であり、血液と関係する病気は基本的に慢性病になる.
基本的に慢性病の症状は、自我に関連しており不規則なリズムになっている. 物質的に観れば血液に原因があり、霊的に観れば自我に原因がある慢性病は遺伝すると言われている.

自我に原因がある場合、自我の基本的な性格がどのような状態にあるのか?これを知ることが重要である.
自我の心的な基本性格に関連しているということを理解することが大事なことである.

5.3 アストラル体に関係する病気

アストラル体に関係する病気は、神経組織の不能によるものである.
急性の病気の多くはアストラル体の不規則に関連している.

5.4 エーテル体に関係する病気

また、一部の病気は慢性でありながら、また別の病気は急性である場合がある. このような場合、エーテル体の表現である腺器官と関連している.
この場合は遺伝とは関係なく寧ろ民族・種族・人種に関係していると言われている.
さらに、エーテル体の影響下にあり、エーテル体の不規則性によって病む諸器官は相互に関連している.

病気の原因には上記4つの他にカルマ(業)によるものもある.
これら5つを理解することが大切なことである.

5.5 カルマ(業)に関する病気

病気とカルマとの関係については、二つの見方ができる.一つは病気をカルマの結果と見做す見方である.
「いまのエーテル体の性向と習慣は、来世において、健康あるいは病気の素質となる.良い性向、良い習慣は、健康の素質となる.悪い性向、悪い習慣は来世において、病気にかかる素質となる.・・・病気になるかどうかは、その人の行為にかかっているが、病気になる素質があるかどうかは、前世の性向にかかっている」.

「現世においてエーテル体に担われているもの、継続的な性格、素質は来世において肉体の中に現れる.邪悪な傾向や情欲を発展させた人は来世で不健康な肉体を持って生まれる.健康に恵まれ、忍耐力のある人は前世で善良な特性を発展させてきた.病気がちの人は邪悪な衝動を養ってきたのである.肉体的素質における限りの健康、病気は自らつくりだしたものなのである.」

ルドルフ・シュタイナー

5.6 幼児期の印象

幼児期の印象は、人生全体の気分に影響を与える.
特にその印象が何度も繰り返された場合には大きな影響を与えると言われている.

人生のある時期から説明のつかないような「心のもつれ」が現れる.

後には忘れられる印象に、愛情・感情がとくに共同すると、その愛情と感情は、似たような体験に際して特別に作用する.

5.7 調和

病気は物質体・エーテル体・アストラル体・自我の調和が乱れたところに発生すると考えられる.
シュタイナーは、人体を以下のように区分した.

  • 神経-感覚組織
  • 律動組織
  • 新陳代謝-四肢組織

これら3つの組織の関係が乱れると病気になるということである.
さらに以下のような関係がある.

神経-感覚組織 思考 自我
律動組織 感情 アストラル体
新陳代謝-四肢組織 意思 エーテル体
  • 自我は思考に関連し、神経-感覚組織に影響する.
  • アストラル体は感情に関連し、律動組織に影響する.
  • エーテル体は意思に関連し、新陳代謝-四肢組織に影響する.

これらを踏まえて次に感情障害について述べる.

6 関連記事

7 参考文献

  • ルドルフ・シュタイナー. (2016). 人智学・心智学・霊智学 筑摩書房.
  • ルドルフ・シュタイナー. (2017). 神秘学概論 筑摩書房.
  • ルドルフ・シュタイナー, (2014). 病気と治療 イザラ書房

8 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
 
 

  • 患者様のための情報提供サイトではありません。
  • 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
  • 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。

 
 
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
 
 
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.

[2017-03-06 月] org-mode のバージョンが 8.3.6 から 9.0.5 へバージョンアップしました. 
 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
Valid XHTML 1.0 Strict


著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2019-05-23 木 08:58

Emacs 25.1.1 (Org mode 9.0.5)

Validate