トランスパーソナル と アントロポゾフィー (3)

目次

1 はじめに

ここでは、前回の記事 を踏まえて、「感情」と「病気」についてメモしたいと思う.

1.1 本稿での考え方

主に心理的側面よりアプローチする方法を採用するが、他の主義・主張を否定するものではない.
特に、アイデンティティ・アプローチによる考え方、生物学的自然主義による考え方とルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーを基本に研究を進めているが、ここではアントロポゾフィーと心理的側面に着目し、 「感情」や「経験」が心身にどのような影響を及ぼすのか関連する事柄を含めて連載記事としてまとめる.

具体的には「経験」・「感覚」・「情動」・「意識」というものが、「心身」にどのような影響を与えているのかを連載記事として簡単に述べていきたい.
以下、「経験」と言う語を使っている場合には身体的経験と感情的経験の両者を含むものを指す.
 

アイデンティティ理論は、感情体験などの精神状態を神経系の状態にまで引き下げます。
感情経験のタイプ - タイプアイデンティティ理論(例えば、基本的な感情理論)は、あらゆる種類の感情経験(例えば、怒りの経験)に対して、ただ1つのタイプの神経生理学的状態があるという仮定に基づいている。
感情経験のトークン - トークンアイデンティティ理論(例えば、 James 1890、1894)は、独特の感情によって特徴付けられる感情のあらゆる実例は、独特の身体的状態と同一であると主張する
(例えば、異なる怒りの経験は異なる神経生理学的状態によって具体化される) 。
特定の脳領域における活動の増加として感情を指すといういくつかの神経科学論文における現在の傾向は、感情についてのアイデンティティの仮定に依存している。

リサフェルドマンバレット

ルドルフ・シュタイナーは、私たちの生活すべてにアントロポゾフィーという考え方を取り入れており、アントロポゾフィー医学にならって私は「アントロポゾフィー心理学」と勝手に名付けた。
「アントロポゾフィー心理学」の考え方は、既存の人間性心理学・精神分析・行動主義を補完し、神学・仏教・東洋医学・霊学をはじめ必要な領域を補完・統合すること目指した私が独自に 
考えたものである。 

2 概要

今回は、「感情」が及ぼす心身への影響について心理学・アントロポゾフィーの観点から病気について、主にルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーを中心にメモする.
前回までの記事は以下を参照.

身体的経験と感情的経験によるアイデンティティ(自己同一性)・パーソナリティに及ぼす影響 (2)
身体的経験と感情的経験によるアイデンティティ(自己同一性)・パーソナリティに及ぼす影響 (1)

今回はアントロポゾフィーによる人間の成り立ちを考慮し、さらに細かい点についてメモする.

3 アントロポゾフィーの基本概念

ここで述べることは、これまで述べてきたことの一部繰り返しになるが、基本概念としてまとめておく.
基本概念として以下がある.

  • 「人の成り立ちと構成要素」
  • 「三分節」
  • 「7年周期のバイオグラフィー」 1
  • 「四つの臓器」

それぞれについて以下に述べる.

3.2 三分節

以下のページを参照.

調和

3.3 7年周期のバイオグラフィー

ルドルフ・シュタイナーは、子どもから大人への発達過程を7年周期で分類している.
アントロポゾフィーに基づく心理療法の中心はクライアントのバイオグラフィー 1 である.

3.3.1 心身の養育期

心身の養育期.生きるために必要な肉体・エーテル体・アストラル体の生育期である.

3.3.1.1 第1 7年期 0歳~7歳 肉体の生育期
  • 神経・感覚器官の成長に始まる身体の基礎が築かれる時期
  • 触覚・生命感覚・運動感覚・均衡感覚などの身体感覚が育つ時期
  • 勇気につながる意思が育つ時期
3.3.1.2 第2 7年期 7歳~14歳 エーテル体(生命)の生育期
  • 呼吸器、循環器系と共にエーテル体が生成される時期
  • 内なる心の働きと外的な世界との呼吸に調和がもたらされる時期
3.3.1.3 第3 7年期 14歳~21歳 アストラル体(魂)の生育期
  • 自我の目覚めの時期
  • 思考・感情・意思の領域である魂の成長にフォーカスが移る時期
  • 心理的な課題や歪みが顕著に現れる時期

3.3.2 魂の成長期

自我の目覚めを迎え、思考・感情・意思の領域である魂の成長に入る.
また、社会との関係性において、心理的な課題が顕著に現れる時期でもある.

3.3.2.1 第4 7年期 21歳~28歳 感性の発展期
  • 関係性が重要な時期.
  • これまでの成長の在り方が影響を与える時期.
3.3.2.2 第5 7年期 28歳~35歳 知性の発展期
  • 肉体の力がピークに達する時期
  • 個人的なバイオグラフィーの偏りが生じる時期
  • 社会や組織との健全な関係性が困難になる時期
3.3.2.3 第6 7年期 35歳~42歳 意思の発展期
  • 魂の急速な成長期に入る
  • これまで歩んできた道程を振り返る時期
  • 人生や自分に対する疑問が生じ悩む時期
  • 自我の力や内省に目覚める時期

3.3.3 霊的な成長へ向かう時期

身体の力の減少とは反対に精神性(霊性)を育て始める時期である.
しかしながら、20代・30代の課題が解決されていない場合、病が生じる時期でもある.

3.3.3.1 第7 7年期 42歳~49歳 葛藤期
  • 多くの気付きと修正を行う時期
  • 心理的苦痛や軋轢が生じる時期
  • リウマチ・胃腸障害・四肢代謝系の病が生じる時期
3.3.3.2 第8 7年期 49歳~56歳 創造期
  • 自己本来の創造性を発揮できるフェーズに入る
  • 地域社会や職場でリーダーとしての活動が求められる時期
  • 内なる声を無視した結果、心臓や呼吸器など循環器系の病につながる時期
3.3.3.3 第9 7年期 56歳~63歳 本質期
  • 自己の本質
  • この時期までに解決されていない内的課題が神経感覚系の病が生じる時期

3.4 四つの臓器

「精神疾患の原因は身体にあります. 身体疾患は、逆に精神的、魂的な要因と密接な関係をもっています.」

ルドルフ・シュタイナー

アントロポゾフィー医学では、こころの状態と臓器の働きを関係づけている.東洋医学でも臓器と感情は密接な関係があるとされている.五臓(肝・心・脾<消化器>・肺・腎)のそれぞれに、怒・喜・思・悲・恐の感情が割り当てられており、感情が過剰に蓄積すると対応する臓器に問題を起こし、また臓器の働きが不調になると特定の感情に固執するとされる.最近の科学でも、身体の反応が先にあり、それを脳が察知して感情が生じるという説もある.

ルドルフ・シュタイナー, (2017). シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門 (社)日本アントロポゾフィー医学の医師会.

3.4.1 アントロポゾフィー医学

アントロポゾフィー医学においては、肝臓・心臓・腎臓・肺の4つが重要な臓器とされており、それぞれが感情と結び付けられている.
また、ぞれぞれの臓器の病が進行すると病気として現れることが知られている.

3.4.1.1 肝臓
  • 肝臓の機能は、たんぱく質や糖質の分解と合成が行われている.自分の身体に必要な素材を作る働きがある.
  • 肝臓は水の要素として関連付けられている.肝臓は体液に富む臓器であり、動脈血・静脈血・リンパ液・胆汁が流れ込んでいる.
  • 肝臓は意思の臓器でもある.

外界の食物を消化分解して自分の身体にしていくように、こころにおいても外界から入ってくる情報や感覚刺激を「消化」して、自分の独自の考えを作り出していくことが必要である.
その際に情報や感覚刺激が多すぎ、どう対応してよいかわからなくなり「消化」できなくなると、悲しみや意欲の低下が起こり、ひどくなると動けなくなる.これがうつ病のプロセスである.

ルドルフ・シュタイナー

3.4.1.2 心臓
  • 心臓は身体の状態にあわせて循環を調整している.
  • 出血したときなどは、心臓は拍出量を増やし、拍動のリズムを速めて循環状態の変化に対応する.
  • 緊張しているときは、鼓動が速くなるように、こころの状態を反映して働きを調整している.
  • 東洋医学では、心臓は喜びの感情を司る.
  • 心臓は火の要素と関連付けられている.

心臓は身体の隅々まで血液を巡らせ体温を保つことに加え、魂の情熱も担っている.
しかし、情熱も行き過ぎれば熱狂となり、熱に浮かされた躁的な活動になる.一方で、過度な良心の束縛は罪悪感の感情を生む.うつ病では、何かがうまくいかなくなったのは自分の所為だと言う自責感が生じるが、それは心臓と関係すると言える.

3.4.1.3 腎臓
  • 腎臓は身体の水分及び電解質の調整、
  • たんぱく質の分解産物である窒素の排泄、
  • 血液の濾過
  • 空気と関連付けられている.
  • 東洋医学では、恐れの感情を司る.
  • アントロポゾフィー医学では、拡散と収縮の臓器である.
  • 拡散は、興奮や外界に向けての衝動である.
  • 収縮は、疲労を表す.
3.4.1.4
  • アントロポゾフィー医学では、肺は地の要素と結び付けられている.
  • 肺胞は酸素を吸収し二酸化炭素を放出するガス交換である.
  • 東洋医学では、肺は「悲しみは肺を破る」とされる.
  • アントロポゾフィー医学では、肺は「強迫性」と関わる.

脅迫思考や行為は、自分でもおかしいと思っていても不安のためにひたすら繰り返してしまう思考や行為のこと.
脅迫的な人は、外から襲ってくるものを恐れ、ひたすら手を洗ったり鍵の確認をしたりする.

3.5 思考・感情・意思に対応する生理作用

思考 微細な塩形成プロセス 自我
感情 微細な湧出プロセス アストラル体
意思 加温プロセス エーテル体

3.5.1 意識的プロセスと無意識的プロセス

人間には無意識的自我機構が働いていて、それによって骨格系などが自我を宿す存在に相応して形成される.

3.5.2 二種の塩形成・思考と骨

思考という意識的活動には塩形成が伴う.それに対応する無意識的な活動は、骨格における塩形成である.

3.5.3 二種の湧出・感情と膠

半意識下の感情には湧出プロセスが伴い、それに対応する無意識的な活動は、軟骨などの膠形成である.

3.5.4 加温プロセス

意思は元々無意識的活動であるので、加温プロセスでは意識的と無意識的の区別はない.

3.5.5 血液への意識化されない作用

血液には以下のものが意識化されずに入っている.

  • 外的活性が完全に濾過された栄養物
  • 身体の深部で生起するプロセス

3.5.6 身体への意識化に関連する事柄

外界を物質界として知覚するのだから、外界的・物質界的なままに血液に取込まれる物質があるはずである.

4 関連記事

5 参考文献

  • ルドルフ・シュタイナー. (2016). 人智学・心智学・霊智学 筑摩書房.
  • ルドルフ・シュタイナー. (2017). 神秘学概論 筑摩書房.
  • ルドルフ・シュタイナー, (2014). 病気と治療 イザラ書房
  • ルドルフ・シュタイナー, (2017). シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門 (社)日本アントロポゾフィー医学の医師会.
  • ルドルフ・シュタイナー, (2016). 秘されたる人体生理. イザラ書房

6 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
 
 

  • 患者様のための情報提供サイトではありません。
  • 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
  • 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。

 
 
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
 
 
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.

[2017-03-06 月] org-mode のバージョンが 8.3.6 から 9.0.5 へバージョンアップしました. 
 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
Valid XHTML 1.0 Strict


脚注:

1
個人の歴史、個人がこれまで生きてきた軌跡

著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2019-05-22 水 19:25

Emacs 25.1.1 (Org mode 9.0.5)

Validate