うつ病 と 睡眠
目次
1 はじめに
日本は、世界的にみても睡眠時間が短い国の1つであり、米国の 8.38時間 に比べ 0.88時間短い 7.5時間 程度の睡眠時間となっている。フランスとの比較では実に1時間もの差がある。1 このことは生活習慣や労働時間、勉強時間などの違いによるものと思われる。
不眠は、心と身体の健康の対敵です。自分にとって適切な睡眠時間を知ることが健康への第一歩です。寝ている時間は、身体と脳の機能回復に必要な時間です。ここでは、睡眠が及ぼす身体への影響について考えてみたいと思います。
2 睡眠の問題
現代はスピード社会と言われるとおり、情報をはじめ私たちの生活に関わる衣食住までもが 30年前頃とは異なり生活様式が変化しています。生活様式は時代ごとによって変化し、時代ごとに生活習慣も異なります。
現代においては、働き方の変化、パソコン、携帯電話(スマホ、タブレット)の普及、子供の遊び方の変化、そして、食生活の変化がどれほど睡眠に影響を与えているのかを考えてみることにします。
2.1 働き方の変化
製造業やサービス業においては、24時間365日稼動し続けなければならない場合もあり、一旦、工場の稼動やサービスを停止すれば再稼動にコストがかかるなどの理由から24時間365日稼動するためにはシフト勤務により対応するのが普通であるが、昼夜交代勤務による疲労から十分な睡眠を得られないことも少なくない。それも若いうちであればどうにかリカバリーも可能であるが年齢を重ねるごとに疲労回復に時間が掛かるようになってくる。このことは他の職業においても同様にスピード感を求められる現代に於いては、十分な睡眠を得ることが出来ない状況で仕事をしなければならないことが多いと言える。
2.2 パソコン・携帯電話(スマホ・タブレット)
情報化社会になり、仕事でも1日中パソコンに向かうことは珍しい光景ではなく、それがむしろ当たり前の状況になっている。さらに、自宅でもパソコン、携帯電話(スマホ・タブレット)により Line、Facebook、ブログ、ゲームなどを楽しむ光景を見ることも珍しくない。1日中何らかの画面に向かい、且つ、自宅でパソコンや携帯電話(スマホ・タブレット)などの情報機器から手を話すことなく夜遅くまで起きていることが不眠の原因の1つになっている。
2.3 子供の遊びの変化
2.4 食生活の変化
ファーストフード、インスタント食品などの普及により手軽に食事を摂ることが出来る現代において、食事そのものの質の変化による影響があるのではないかと考える。具体的には、食材に対する食品添加物が当たり前になっている現代において、食品添加物は不眠のみならず危険なものもあることを知っておくべきです。
- 発がん性物質 など :サッカリン・サッカリン・ナトリウム(清涼飲料水、菓子類などに使用)
- 不眠症、うつ など :アステルパーム(ダイエット食品、ゼロカロリー飲料などに使用)
- 細菌、カビの増殖 など:安息香酸・安息香酸ナトリウム(清涼飲料水、マーガリンなどに使用)
その他にも数多くの食品添加物がありますが、米国や他の国では禁止されているものが日本では使用されているものもあります。食品添加物の中には不眠症 や うつ病 を誘発するようなものもあるので注意が必要です。
厚生労働省:食品添加物
東京都医師会 食品添加物 - 気をつけたい安全性
2.5 その他の変化
生活の変化として、入浴があげられます。入浴は単に身体を綺麗にするだけでなく身体を温める効果があります。身体を温めることにより寝つきを良くしたりするなどの効果があります。しかしながら、現代に於いてはシャワーなどにより全身を湯船に浸からずに入浴を済ませてしまう人もいます。
また、現代はストレス社会と言われるように仕事が終わって自宅について床に入る前に飲酒する人が増えていますが、これは質の良い睡眠を得ることとは逆効果であると言われています。
3 睡眠障害
一般的に睡眠時間は個人差があるが、多くの場合 睡眠時間が 6時間以下 の場合は睡眠不足が生じると考えられている。睡眠不足が定常化された状態になると以下に示すような症状が現われる。
- 不眠
- 日中の眠気
- 居眠り
- 朝が起きられない
- 異常行動
また、個人ごとのパーソナリティ、発達の違い、環境などにも考慮する必要がある。
不眠症は以下のように分類される。
- 不眠症
- 既日リズム睡眠障害
- 睡眠時無呼吸症候群
3.1 治療法
医療機関では主に薬物療法や高照度光療法などの生物学的な治療法が用いられるが、睡眠・覚醒の問題については常に患者個々人の生活と共に関連していることから、生活改善が重要であると考えられる。特に、患者個々人の認知や行動を修正することが早期改善に繋がるものと考えられる。
3.1.1 認知行動療法
認知行動療法による睡眠障害の効果は、うつ病 に比べて短いセッション数で7~8割の改善効果が期待できることが報告されている(Morin et al, 1999)。
特に不眠症に対しては、認知行動療法の手順が確立されていることからエビデンスの高い治療法である。
主に以下の内容について行う。
- 睡眠教育
- 睡眠衛生
- 睡眠スケジュール法
- リラクセーション
毎日睡眠に関する記録(睡眠日誌)をつけることにより、その記録を元に認知行動療法の評価を行いながらセッションを進めていく。
4 うつ病になると不眠症になる
私の 3度、30年にもわたる うつ病 の経験から、抑うつ傾向を示す状態が続くと不眠に陥ることは明らかです。床に入っても3~4時間も眠れない状況が続き、睡眠に入ったと思っても1~2時間睡眠した程度ですぐに目が醒めてしまうという状態が何日も継続します。うつ病 も生活習慣や認知の問題によるところが大きく、認知行動療法による認知の修正が うつ病 を悪化させないことにつながっていきます。認知行動療法の詳細は こちら 。
4.1 うつ病 と 不眠症の違い
私の うつ病 の体験 にも書きましたが、ストレスが蓄積されていく初期の段階においては、不眠症と似たような症状が生じます。つまり、床に入っても中々眠りにつけない、朝起きるのが辛い、日中に眠くなるなどの症状が現れます。この段階で不眠症との違いは、うつ病 は、思考、感情に変化が生じる点が異なります。このように単なる不眠と違う点が うつ病 の特徴です。
4.2 不眠症 は うつ病 の前兆か
以下の論文にあるとおり、不眠だから必ずしも うつ病 とは限らない。うつ病 において過眠となるケースがあることや、不眠が気分障害だけの問題ではなくパニック障害などの不安障害の誘因として認められることがある点は鑑別診断で注意を要する。
つまり、 不眠が生じたからといって必ずしもうつ病 ではない ということである。ただ、不眠が続くようであれば、気分障害や不安障害の可能性がある。
Abstract:不眠,過眠など睡眠の障害は,うつ病など気分障害の症状としてきわめて高頻度で認められる.これら睡眠の症状は,双極性障害(=躁うつ病,躁状態では睡眠時間が短縮し,うつ状態ではそれが延長する)のように経過の指標として役立つ場合がある.また,通常のうつ病では不眠の訴えが多いが,一部には過眠を伴ううつ病もある.過眠を伴う例では,過食,極度の疲労,気分の反応性,他人からの拒絶に対する過敏性などを伴うことがあり,そのような群は「非定型うつ病」と呼ばれる.睡眠の障害は,気分障害の発症や悪化の要因ともなる.特に近年注意すべきは,誤った理解や生活習慣に基づく睡眠不足の持続で,気分障害のみでなく,パニック障害など不安障害の誘因としてもしばしば認められる.患者教育や健康教育を通じて十分な注意を促していく必要がある(著者抄録)
【成人病・生活習慣病とうつ病 誤診と見逃しを避けるために】 不眠症・過眠症とうつ病
Author:佐々木 司(東京大学保健センター)
Source:成人病と生活習慣病 (1347-0418)36巻3号 Page314-317(2006.03)
5 参考文献
精神療法編集委員会 (編). (2015). 精神療法第41巻第6号 - “睡眠精神療法学"入門. 金剛出版.
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4772414657/
6 ホームページについて
このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
- 患者様のための情報提供サイトではありません。
- 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
- 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

