うつ病 と 食事
1 はじめに
うつ病 の誘因の一つとして生活習慣があるが、その生活習慣の中でも睡眠や食事による うつ病 への影響について、ここでは、私自身の うつ病経験 から食事が及ぼす うつ病 への影響について考えてみたいと思います。これまでの私のうつ病経験は 私的思考 にまとめています。
うつ病 の 発症から寛解 までの道のり、そして、うつ病 を 二度と再発させないための工夫などについても今後書いていく予定でいます。
この連載記事をとおして、うつ病 患者さん や 双極性障害 の患者さん に少しでも役に立てられれば幸いです。
うつ病 の詳細については、こちら を参照。
2 日本人の食の変化
2.1 弥生時代
日本に米が伝来したのは弥生時代であるが、 稲作により安定した食料需給が可能 となり、これ以降、日本では寒冷地を除き日本全国で稲作が行われるようになった。また、米だけでなく 稗、粟、小豆などを食していた。 その他には魚類などを中心とした食事や豚の飼育による肉食もあった。
2.2 奈良時代
この頃になると日本全国で稲作が行われるようになり、米を税とする納税が行われるようになり、貴族階級では米を主食としていたが、 一般庶民は稗や粟などを雑穀を主食 としていた。また、天武天皇による殺生・肉食禁止令により 貴族は肉を食す習慣がなくなった。
2.3 平安時代
肉食が禁止されていたことから、貴族の料理は栄養よりも見た目の美しさを強調する料理が主体、一方、 庶民は奈良時代と変わらず質素な食生活 であったとされている。この時代の貴族料理が後の日本料理の原型になったとされている。
2.4 鎌倉・室町時代
貴族はこれまで肉食を禁忌としたことで、偏った食生活になり、不健康であったとされ、この時代に 肉食や雑穀類なども食す習慣が取り入られている。 玄米食 や 焼き魚 などによる見た目の華やかさよりも 健康を第一とした食生活へ変化 した。
2.5 安土桃山時代
玉葱、ジャガイモ、ほうれん草 などの野菜が日本に入ってきたことから、新たな調理法が開発された。この時代に 懐石料理が誕生する。
2.6 江戸時代
この時代になると 醤油 が料理に使われるようになり 塩、砂糖、酢、味噌、鰹節、昆布などをはじめ調味料が充実 してきた。それでも農民は米を常に食すことはなく 米と雑穀を混ぜて食していた とされている。 農民以外の庶民は米が主食 となっていたようである。
2.7 明治時代
この時代の特徴は 西洋料理 が日本に入ってきたことである。そして、日本料理と西洋料理を混ぜ合わせた 洋食 という新たなジャンルを作り出したのもこの時代である。特に牛肉を食すことが上流階級のステータスとも言えるような風潮が浸透し、 牛鍋 、所謂、すきやきが登場したのもこの時代である。
2.8 大正・昭和時代
洋食が一般庶民に浸透したのがこの時代 であるが、昭和の時代には第二次世界大戦により、満足に食事することさえ困難な時代で栄養不足や病気などが多かった。その後、日本は高度経済成長の下、発展を遂げていくが、電気釜や炊飯ジャー、電子レンジなどの登場により簡素化した食事、所謂、 レトルト食品や外食産業 が発展していく。
3 食事の回数
現在では、1日3食が標準の食事であるが、日本での 1日3食の習慣は20世紀に入ってから のものであり、それまでの日本は 1日2食 が標準であった。
4 日本人の食において何が変わったか
社会実情データ図録 によれば、国民一人当たりの主な食材の消費量は以下のような特徴がある。
- 米を食す量が1910年代の半分以下までに減っていること。およそ、1日150g。
- 牛乳の消費量が主食の米よりも1.5倍多いこと。およそ、1日250g。
- 肉の消費量が1950年代の8倍にまで増えていること。およそ1日80g。
- 魚の消費量は肉の消費とほぼ同程度。およそ1日80g。
- 野菜の消費量が増えてきていること。およそ、1日250g。
- 果物の消費量が増えてきていること。およそ、1日100g。
このようなことから、 主食が米ではなく乳製品を主体とした食事へ変化 していること、 欧米化 していることが解る。
5 日本人の摂取エネルギー
5.1 年代別外食比率
平成27年「国民健康・栄養調査 の結果 によると、現代に於いては食に関する問題として、 若い世代ほど栄養バランスに課題がある ことが示されている。また、外食やレトルト食品を中心とした食事内容になっている点も特徴である。特に、20代~50代の男性ではそれぞれの年代ごとに 外食比率 は、以下のようになっている。
年代 | 外食比率 | 週2回~3回の外食比率 |
---|---|---|
20代 | 63.1% | 45.1% |
30代 | 59.8% | 37.0% |
40代 | 49.9% | 33.6% |
50代 | 46.2% | 26.5% |
5.2 栄養素・年代別 の 摂取エネルギーと主な栄養素
e-Stat によると、国民一人当たりの栄養素摂取量を公開しており、このデータの中には興味深いことが記されている。それを抜粋したのが下表である。
15 - 19 歳 | 20 - 29 歳 | 30 - 39 歳 | 40 - 49 歳 | 50 - 59 歳 | 60 - 69 歳 | 70 - 79 歳 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1日1人あたりの摂取エネルギー [Kcal] | 2,064 | 1,874 | 1,873 | 1,877 | 1,929 | 1,955 | 1,776 |
主な栄養素の内訳 | |||||||
たんぱく質 [g] | 72.6 | 66.9 | 65.9 | 66.0 | 70.6 | 72.7 | 66.4 |
脂質 [g] | 67.8 | 62.7 | 58.4 | 57.1 | 57.5 | 55.7 | 45.8 |
コレステロール [g] | 0.39 | 0.32 | 0.30 | 0.30 | 0.32 | 0.31 | 0.28 |
炭水化物 [g] | 281 | 250 | 252 | 252 | 258 | 269 | 259 |
食物繊維 [g] | 12.8 | 12.1 | 12.5 | 13.1 | 14.5 | 16.4 | 16.1 |
ナトリウム [g] | 3.7 | 3.7 | 3.6 | 3.7 | 3.9 | 4.2 | 3.9 |
カリウム [g] | 2.0 | 1.9 | 1.9 | 2.0 | 2.3 | 2.5 | 2.4 |
カルシウム [g] | 0.5 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.5 |
マグネシウム [g] | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 |
5.2.1 10代の特徴
栄養素の内訳として、10代は成長期にあることからも、たんぱく質、脂質、コレステロール、炭水化物、食物繊維がそれぞれの年代の中で最も多く摂取されている。
5.2.2 20代の特徴
10代と比べて摂取エネルギーが 約 200 [Kcal] も減少している。また、たんぱく質、炭水化物、食物繊維が少ない。
5.2.3 30代の特徴
30代は20代と比べて摂取エネルギーは変わらないが、炭水化物と食物繊維がやや増加傾向。
5.2.4 40代の特徴
40代はたんぱく質、炭水化物、食物繊維、ナトリウムがやや増加。
5.2.5 50代の特徴
摂取エネルギーが40代に比べて増加。たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維、ナトリウムがやや増加傾向。
5.2.6 60代の特徴
摂取エネルギーは50代よりも増加。たんぱく質、炭水化物、食物繊維、ナトリウムが50代よりもやや増加。
5.2.7 70代の特徴
70代になると60代よりもすべての栄養素において減少傾向となる。
5.3 運動習慣
e-Stat]] によると、国民一人当たりの運動習慣の有無を公開しており、このデータの中には興味深いことが記されている。それを抜粋したのが下表である。
20 - 29 歳 | 30 - 39 歳 | 40 - 49 歳 | 50 - 59 歳 | 60 - 69 歳 | 70 - 79 歳 | |
---|---|---|---|---|---|---|
運動習慣あり (%) | 13.3 | 11.4 | 16.6 | 19.2 | 34.4 | 39.2 |
運動習慣なし (%) | 86.7 | 88.6 | 83.4 | 80.8 | 65.6 | 60.8 |
6 栄養素と病気
偏った食生活は病気の原因になりますが、上の表を見ると、 40代~60代 において、 たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維、ナトリウムが増加傾向 を示していることや、摂取エネルギーの増加に伴う運動習慣を見ると、70代では約4割が運動習慣を持っているのに対して、40代、50代では2割に満たない。これは、社会的にも仕事を支える中心的な世代であることから運動するための時間が取れないなどの理由によるものであると推察される。
一方、 運動習慣がない40代、50代 において 摂取エネルギーが増 えており 、且つ、 脂質、炭水化物やナトリウムなどの増加 や偏った食事習慣が 成人病 に繋がっていることも 上述の結果や 肥満症/メタボリックシンドロームの調査・統計 より言える。
6.1 うつ病 と 食の関係
健康的な日本型の食事でうつ症状が低下 や Dietary patterns derived by reduced rank regression (RRR) and depressive symptoms in Japanese employees: The Furukawa nutrition and health study など うつ病 と 食事 に関する研究は数多くあり、食事がもたらす うつ病 への影響があると考えるのが一般的である。
6.1.1 うつ病 を予防する食事
Dietary patterns derived by reduced rank regression (RRR) and depressive symptoms in Japanese employees: The Furukawa nutrition and health study によれば、 うつ病 を予防する食材 として、 野菜 、 キノコ 、 海藻 、 大豆製品 、 緑茶 、 ジャガイモ 、 果物 、 米の摂取量を少なくする 、 小魚 の高摂取を特徴とする食事パターンは、 抑うつ症状の減少 と関連していたことを報告した。
つまり、現代の食事を見直し、古来から伝わる 日本食に戻す ことが うつ病 を予防する ことに関係している。
6.1.2 私の食事療法
病前から寛解期前まで、私はの食事内容は、肉を中心とした脂物、炭水化物、乳製品などカロリーが高く、且つ、食品添加物も多く摂取していた。今後、うつ病を予防する意味でも食事内容の見直しを行うことは意味のあることと考え、寛解期に入ってから食事の内容を変えてみた。
6.1.2.1 食事内容の変更
主な食材ごとに以下のようなルールを決めて食事内容を変更した。基本的には食品添加物が含まれていない食事に変更したこと、および、白米から玄米に変更した。ほとんど精進料理のようなものになったが、これが日本食の基本であると考えている。
- 白米 → 玄米摂取
- 肉類 → 摂取しない
- 魚類 → 青魚系のみ摂取
- 塩分 → 塩化ナトリウム系の食塩は摂取しない
- 醤油 → 極力摂取しない
- 味噌 → 薄味に変更
- 野菜 → 積極的に摂取
- 果物 → 積極的に摂取
- 豆類 → 摂取
- 粉物 → 摂取しない
- 油類 → オリーブオイル、ごま油に変更
- 麺類 → 蕎麦のみ摂取
- 漬物 → 食品添加物が混入されていないものに限り少量摂取
- インスタント食品 → 摂取しない
- ファーストフード → 摂取しない
- 加工食品 → 摂取しない
- 乳製品 → 摂取しない
- 乳酸飲料 → 摂取しない
- 炭酸飲料 → 摂取しない
- お茶 → 摂取
- コーヒー → 1日2杯まで摂取
- 菓子類 → 摂取しない
このような食生活に変更すると、コンビニ や 外食などに行くことは無くなり、経済的にもよい。
6.1.2.2 食事を変えたことによる変化
慣れるまでに1週間程度の時間を要したが、このような食事にすることにより、身体の負担が少なくなったように感じる。また、睡眠も熟睡できることなどメリットが多い。
6.1.2.3 食事による病気の予防
これまでの白米や肉類などを中心にした食事では、食品添加物が多量に含まれており、それが身体に悪影響を与えていた可能性は否定できない。このことから、出来る限り精進料理に近い食事を心がけることによって健康を維持できるのではないかと考える。つまり、この項の結論として、一汁三菜を基本とした日本食に変えることにより、うつ病 に限らずあらゆる病気を予防することが出来るのではないかと考える。
8 ホームページについて
このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
ホームページの作成には、Emacs 25.1.1 を使い org-mode により HTML を生成しました。Emacs を使った理由として、Mac , Windows , FreeBSD などOSを問わずに編集出来ること、また、日頃の文書作成も Emacs を使っているため慣れ親しんだツールを使うことが何よりも使い易いためでもあります。このホームページは、大学、大学院で学んだ事柄を中心に私自身が日々の研究のために忘れないようにするための私自身の備忘録、或いは雑記帳の様なものですので、記載されている事柄について十分な確認や検証をしたものではありません。
- 患者様のための情報提供サイトではありません。
- 医師、看護師、その他の医療従事者のための情報提供サイトではありません。
- 研究者、大学教職員、大学院生、学生のための情報提供サイトではありません。
したがいまして、このサイトは私のためのネットノートなので、読みにくかったり誤りもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると嬉しく思います。
このホームページに掲載している図表、画像、文章に関しての転載、複写は自由ですが、いかなる結果が生じても責任を負えませんことを予めご承知おきください.
なかなか、まとめが進んでおらずリンクが機能していないページがあったり、書きかけのページがあったりします. 日々、アップデートしております.
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

