耳鳴り、目眩、腰痛、変形性膝関節症の改善例
目次
1 はじめに
2017年8月27日(日).熊本県上益城郡益城町の仮設住宅でボランティア活動(施術)をしていた時の話し。
午前10時頃、母親と娘の二人の女性がやってきた.母親は身長160cm程度、痩せ型で年齢は50~60歳ぐらいに見えた.
レセプトでヒアリングすると、右膝関節痛、背腰部痛、耳鳴り、聴こえにくい、偏頭痛、眩暈などの症状を訴えた.年齢を確認すると、80歳ということでとてもその年齢には見えず驚いた.
今回の施術では、左膝の関節、左脚爪先・踵の角度の調整、右脚踵の調整、背骨の調整、坐骨の調整、及び、頭骨、三叉神経、顔面神経、感覚細胞のヒーリングを行った.
詳しくヒアリングしている段階で、軽度の抑うつ傾向があることが判明し、ストレスによる感覚神経の不調和(神経障害またはメニエール症候群を疑った)によるものだと考えた.
これまで幾つかの病院で診断・治療を試みたとの事であるが、改善には至らなかった.
2 メニエール症候群とは
眩暈を主な症状とするものであるが、同時に吐き気、難聴、耳鳴り、頭痛などを伴う場合がある.
眩暈、耳鳴り、難聴、内リンパ水腫の4つの条件が揃ったものがメニエール症候群と呼ばれている.
2.1 定義
日本めまい平衡医学会の診断基準では下記の1.2.3.の3点を満たせばメニエール病と確定診断とする.また、1.と3.、あるいは2.と3.のみの場合にはメニエール病の疑いとする.
1.数十分から数時間の回転性めまい発作が反復する。
2.耳鳴り・難聴・耳閉塞感がめまいに伴って消長する。
3.諸検査で他のめまい・耳鳴り・難聴を起こす病気が鑑別(除外)できる。
Wikipedia より
3 膝関節痛とは
膝関節痛とは を参照.
4 抑うつとは
抑うつとは を参照.
5 疾患の状況
住居 熊本県菊池市在住
性別 女性
年齢 80代
職業 無職
痛み 歩行動作の異常、膝関節症(L)
症状 耳鳴り、眩暈、聴こえにくい(特に低音域)、偏頭痛
発症 左膝:以前より膝に痛みが生じており、歩行時に左膝に痛みが生じていた.
耳:3年くらい前ぐらいに発症したものと思われる.同時に眩暈、偏頭痛も発症.
通院 これまでに地元の病院(内科)で治療.
6 施術内容
施術は以下の内容を行った.
6.1 前処理
- 長尾ヒーリングにより胃を元の正しい位置に戻す
- 血流改善
- 骨盤調整
- チネル兆候テスト(足根管症候群確認)
- 足関節の外反テスト(三角靭帯損傷確認)
- 脚長差の確認テスト
- 足部の変形確認、歩行確認、立位、座位の姿勢確認
6.2 後処理
以下の3つの療法を適用した.
- 長尾ヒーリング療法(股関節・膝関節・足関節・三叉神経・顔面神経・感覚細胞)
- 関節調整法(足関節の調整・股関節の調整・膝関節の調整)
- クリニカル・マッサージ療法(腰背部・坐骨・顔面)
7 施術後の状況
施術後、以下の確認を行った.
7.1 膝関節の確認
→ スムーズに仰臥位から立位への体位の変換が出来るようになった.
→ 左膝の機能を確認し、痛みが無いことを確認した.
7.2 歩行の確認
→ 歩行時の痛みがなくなった.
→ 左膝伸展時の痛みもなく軽快な動作が出来るようになった.
→ 左踵がほぼ正常になり歩行時の異常も見られなくなった.
7.3 立った姿勢から座ってみる
→ 立位から座位への違和感、痛みが無いことを確認した.
→ 座位から立ち上がり時の痛みや違和感が無いことを確認した.
7.4 チネル兆候の確認
→ 足底部の放散痛が無いことを確認した.
7.5 耳鳴りの確認
→ 施術前に比べ耳鳴りが殆ど聴こえなくなったとのこと.
7.6 眩暈
→ 歩行、座位を繰り返してみたが、この時は眩暈が起きなかった.
7.7 偏頭痛
→ 現在のところ起きていない.
7.8 難聴
→ 多少、聴こえ方に変化があったようであるが、程度は不明.継続的に確認していくこととする.
7.9 軽度の抑うつ傾向
軽度の抑うつ傾向であることをご本人も認めており、これまでに何回か心療内科にも通院していた.
今回は、何故、うつ症状になるかを簡単にお話しし、うつにならないための日常生活で心がけることについてお話しした.
8 結論
1)長尾ヒーリング、関節調整療法により、膝関節(L)の痛みが消失し、機能の回復が図られた.これにより、日常生活での制限が無くなった.
また、変形性足関節症、及び、内転足だった変形した左足が正常な形状に戻った.
2)耳鳴りについては、施術前に比べ殆ど聴こえなくなったが、次回施術まで様子見とすることとした.
3)難聴の程度が軽いため、聴こえ難さは(特に低音域)あるものの、聴こえ方に変化があるように見られる.次回施術まで様子見とする.
4)眩暈、偏頭痛については、施術後は起きていない.
9 考察
これまで、メニエール症候群の施術は無く、今回初めてのケースとなったが、軽度の抑うつ傾向があることから、日常的なストレスの蓄積が原因になっていることが考えられる.
メニエール症候群の多くは、30~40歳代の女性に多く発症することが知られているが、今回の様に高齢者にも認められるのは珍しい(その後の医師の診断でもメニエール症候群と診断).
心の話しを少しさせて頂いたところ、ご本人の中で原因となっていることに思い当たることがあるらしいことが伝わってきた.
今後は、思考の修正を含めたストレス予防についてもカウンセリングしていく予定.
10 参考文献
内田淳正(監修)(2011). 標準整形外科学. 医学書院.
ジョセフ J. シプリアーノ, 斉藤明義(監訳). (2016). 整形外科テスト法(増補改定新版). 医道の日本社.