投影査定心理学(総論②)

目次

1 はじめに

投影法の解釈を行うためには理論が必要.ここでは、投影法とパーソナリティ理論との関連について記す.
 
ここでは、投影法とパーソナリティ理論の総論についてまとめた.
 

1.1 メニュー

区分 項目
総論① 投影法とは何か
総論② 投影法とパーソナリティ理論
総論③ 心理臨床における投影法
総論④ 心理学における投影法と関連領域
総論⑤ 投影法の可能性
各論① 視覚連想法1
各論② 視覚連想法2
各論③ 物語作成法
各論④ 描画法1
各論⑤ 描画法2
各論⑥ 言語連想法
各論⑦ その他の投影法

2 査定の背景としてのパーソナリティ理論

2.1 気質・性格・パーソナリティの意味

個人の人柄や人となりを表す学術用語には、気質(temperament)、性格(character)パーソナリティ(personality)などがある.
 

2.1.1 気質

生物学的基盤を持ち、感情や欲求といった原初的な特徴を強調する用語.

2.1.2 性格

社会的態度を含む個人特性の総称として用いられ、パーソナリティとほぼ動議に用いられてきた.

2.1.3 パーソナリティ

人格と訳されてきたが、現代ではほぼカタカナ表記でパーソナリティと原音で表記されるようになってきている.
 
意味としては、多くの点で性格と重複するが研究者によっては自己概念なども含み、もっとも包括的な用語である.
 
また、精神分析学の影響を受けてパーソナリティという用語の方が発達論的観点を含んでいるという立場もある.
 
気質が生物学的基盤を持った用語であり、先天的であるとのニュアンスを有しているのに対し、性格やパーソナリティは後天的あるいは学習の結果、発達の影響によって変化するという意味を含んでいる.
 
この 可変性こそがパーソナリティ概念の変遷の源 である.

2.1.4 パーソナリティ研究について

2.1.4.1 ギリシャ時代

現在のパーソナリティの捉え方がこれまでどのように発展してきたのかを辿るには、古代ギリシャ時代に遡らなければならない.
 
魂に関する著作で哲学者のアリストテレースは、『人相学』著し、顔の形態によってその人の特徴を判じている.
 
アリストテレースの弟子である テオプラステスは、『人さまざま』の中で、「粗野」などの特徴的な30の人柄をあげ、その特徴を記述している.
 
ギリシャ文学者 バウラ は、以下の様に述べている.
 

・・・人間の性格の中心を見抜く鋭い目をもって、叙事詩や舞台の上での人間を表現した (p211)
 
彼らが問題としたのは、「気質」ではなく、思考と感情であり、また、思考と感情が結びついて或る結果を促すということであった (p212) 

 
バウラの指摘に関して、思考と感情を強調している点について、「気質」が主に感情と関連が深い概念であることを考えると、そこに思考を加え、より多次元的に特徴を捉えようとしている.
 
このことが以後のパーソナリティ研究にも影響を与えている.

2.1.4.2 紀元前25年頃(ローマ帝国時代)~

この時代は、ガレノスが、ヒポクラテスの体液説を再評価し、各体液の性質とパーソナリティ特性とを限定的ながら対比させて論じた.
 
後に類型論と呼ばれるパーソナリティ研究の原型(性格学)が表れた.
 
哲学者カント(Kant,I.)もその著書「人間学」で気質を論じる際に体液説を用いている.
 

2.1.4.3 近世

ガル(Gall, F. J.)が、頭蓋観察(craniscopy)を用いて、頭蓋骨の大きさや形状によってその個人の性質や能力がわかると主張した.後の骨相学.
 
ロンブローゾ(Lombrozo, C.)の生来的犯罪人説やコルマン(Corman, L.)による相貌心理学、脳の機能局在論などにその影響が見てとれる.

2.1.4.4 20世紀

精神科医クレッチマー(Kretschmer, E.)による個人の体型と精神罹患のリスクを対応させた.
 
たとえば、細長型の個人は精神病中でも統合失調症になりやすく、そのようなリスクを有する気質を分裂気質と呼び、非社交的な特徴を有していると考えた.
 
他にも、肥満型の個人は、循環(躁うつ)気質、闘志型の個人は粘着質であると論じた.
 
現代では、てんかんが精神疾患ではなく、器質性疾患であることが明らかにされ、当時の三大精神病に基づく分類は否定されている.
 

2.1.4.5 特性論

イギリス経験論をベースに20世紀以降主に英米にて展開したアプローチが特性論である.
 
特性論とは、外部に表れる行動などからその人の内部特性を推測するというものである.
 
この特性が多次元的でそれぞれが定量的に把握できるという考え方である.
 
たとえば、個人には怒りっぽさと悲しみやすさという2つの次元があるとすると、ある人では前者が高く後者が低い、またある人では前者が低く後者が高い、というように個人の特性を把握できるとする立場である.この特性論は、個人のパーソナリティを多次元的に捉える点、各次元ごとに数量化しやすくそのことによって各次元ごとに個人間の比較が容易になる点などの優位性を示している.
 
この立場では、オルポート(Allport, G.)、キャッテル(Cattel, C.)、ギルフォード(Guilford, J. P.)、アイゼンク(Eysenck. H. J.)などがそれぞれの特性論に基づくパーソナリティ・モデルを提唱し、今日に至っている.現在のパーソナリティ研究はこの特性論が主流である.
 

  1. ビッグファイブ

    今日もっとも有力な考え方は、ゴールドバーク(Goldberg, L. R.)によって提唱されたビッグファイブ(Big Five Personality Model)と呼ばれるものである.
     
    個人のパーソナリティ特性を「外向性」、「神経症的性格」、「協調性」、「勤勉性」、「経験への開放性」の5つに大別できるとする考え方.
     
    しかしながら、他の5因子によって構成されているとする考え方もあり、一致した見解が得られていない.

  2. クロニンジャー(Cloninger, C. R.)

    パーソナリティは気質の側面と性格の側面から構成されているとする新たなパーソナリティ感を提出した.
     
    この考え方は、忘れられていた気質に再び注目し、気質と性格という従来の考え方を包括したことである.
     
    遺伝子との関連性が指摘され、最新の生物学的知見とパーソナリティとの接点を見出している.

3 参考文献

小川俊樹, & 伊藤宗親. (2015). 投影査定心理学特論 (放送大学大学院教材). 放送大学教育振興会.

4 ホームページについて

このホームページは、うつ病の精神治療法を研究するための私自身のためのサイトです。私自身が覚えることが苦手、且つ、忘れっぽい性分なので備忘録として主に以下の内容のものを扱っています。どこにいてもこのホームページを閲覧することができるようにという目的でこのホームページを作りました。
 
 
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著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2017-10-21 土 15:22

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