心理統計法-多変量分散分析(1)

目次

1 はじめに

多変量分散分析(Multivariate Analysis of Variance :MANOVA)は、従属変数を複数投入して同時に分析できることが大きな特徴。
 
この点で通常の分散分析と異なる。
例えば、複数の従属変数に対して個別に分散分析を複数回行うことは、多重比較の問題が発生する。
また、個別に複数回分散分析を行うことは、第一種の過誤を増大させるため適切ではない。

2 MANOVA の仕組み

ANOVA(分散分析)と基本的な考え方は変わらない。MANOVA でも全体を各要因の「効果」と「誤差」の要素に分解する。
ただし、ANOVA では全体平方和、群間平方和、郡内平方和を1つの数値で表すことができたが、MANOVAでは行列で表現される。

3 事例

以下の表を用いて多変量分散分析を行う。
独立変数は「性別(男性:1、女性:2)」のみ。従属変数は「社会性」と「協調性」。
 
表1 実験結果のデータリスト

ケースNo. 性別 社会性 協調性
1 1 1 5
2 1 1 2
3 1 2 4
4 1 4 1
5 2 8 14
6 2 8 9
7 2 7 11
8 2 9 10
       

3.1 全体平方和、群間平方和、郡内平方和

1)社会性
 
全体平方和(80)=性別の群間平方和(72)+ 郡内平方和(8)
 
2)協調性
 
全体平方和(152)=性別の群間平方和(128)+ 郡内平方和(24)
 
これを行列で表すと以下のようになる。
A:社会・協調性の全体平方和、B:社会・協調性の性別の群間平方和、C:社会・協調性の郡内平方和。
 
それぞれの行列は以下のように表される。

\begin{eqnarray*} A= \begin{Bmatrix} 80 & *** \\ *** & 152 \end{Bmatrix} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} B= \begin{Bmatrix} 72 & *** \\ *** & 128 \end{Bmatrix} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} C= \begin{Bmatrix} 8 & *** \\ *** & 24 \end{Bmatrix} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} A & = & B+C \end{eqnarray*}

 
 
従って、求める行列式は以下のように表される。

\begin{eqnarray*} A=B+Cは右式のように表せる。 \begin{Bmatrix} 80 & 90 \\ 90 & 152 \end{Bmatrix} = \begin{Bmatrix} 72 & 96 \\ 96 & 128 \end{Bmatrix} + \begin{Bmatrix} 8 & -6 \\ -6 & 24 \end{Bmatrix} \end{eqnarray*}

 

3.2 MANOVA の 検定

ANOVA では F値という一つの指標で検定を行っていたが、MANOVA では、以下のように4つの検定基準がある。
 

  • Wilks のラムダ(λ)
  • Pillai のトレース
  • Hotelling-Lawley のトレース
  • Roy の最大値

それぞれ近似的にF 分布する指標になっている。
実際にどの検定量を用いるかは決定的な結論はでていない。
最も一般的に用いられているのは、Wilks のラムダ であり、次のように定義されている。
 

\begin{eqnarray*} Wilks の (λ) = & \frac{|郡内のSSCP|}{|全体のSSCP|} \end{eqnarray*}

「|」は行列を示す。

つまり、λ の値が小さい場合、処理効果の説明力が高く、独立変数による有意差があることを意味する。

3.3 MANOVA を適用する際の前提条件

3.3.1 Box の共分散行列の等質性の検定

群間の分散共分散行列が等質か否かを検討する。

3.3.2 Bartlett の球状性の検定

群内 SSCP 行列が単位行列に比例するかどうかを検討する。

3.3.3 多変量正規性

変数が単一の場合の正規分布を変数が複数の場合に拡張したもの。この検討は難しいとされている。
複数の従属変数の個々がたとえ正規分布に従っている場合であっても、多変量としてまとめてみた場合に正規分布に従わないということがありえる。

4 引用文献

小野寺 孝義. (2015). 心理・教育統計法特論 (放送大学大学院教材), 放送大学教育振興会.
田中 敏, 山際 勇一郎. (1992). ユーザーのための教育・心理統計と実験計画法 - 方法の理解から論文の書き方まで, 教育出版.

著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2017-02-07 火 18:50

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