心理統計法-ノンパラメトリック検定(2)
目次
1 はじめに
ここでは、対応のない \(k\) 水準間の比較について事例を使って記す。
\(k\) > \(2\) 個の独立した群について、その代表値を比較する方法が Kruskal-Wallis のH 検定 である。
H 検定は U 検定と同様に観測値の順位和を使って、水準間の代表値の違いについて有意性検定を行う。
2 事例
以下の表1に示したデータを用いて H 検定を行ってみる。
2.1 データ表示
表1 データ表示
\(A群\) | 2 | 4 | 6 | 5 | 7 |
\(B群\) | 1 | 3 | 2 | 4 | 6 |
\(C群\) | 5 | 7 | 8 | 3 | 9 |
2.2 観測値をを一つの表にまとめる
表2 観測値を一つにまとめる
観測値 | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | 4 | 5 | 5 | 6 | 6 | 7 | 7 | 8 | 9 |
順位 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
平均順位 | 1 | 2.5 | 2.5 | 4.5 | 4.5 | 6.5 | 6.5 | 8.5 | 8.5 | 10.5 | 10.5 | 12.5 | 12.5 | 14 | 15 |
2.3 3水準に表を分割する
表3 順位を3水準に分ける
\(A群\) | 2.5 | 6.5 | 10.5 | 8.5 | 12.5 |
\(B群\) | 1 | 4.5 | 2.5 | 6.5 | 10.5 |
\(C群\) | 8.5 | 12.5 | 14 | 4.5 | 15 |
2.4 帰無仮説
\(H0\) = \(k 個の水準間で代表値に差はない\)
2.5 順位和を計算する
順位和:\(Ra\) = \(40.5\), \(Rb\) = \(25\), \(Rc\) = \(54.5\)
平均順位和: \(\bar{Ra}\) = \(8.1\), \(\bar{Rb}\) = \(5\), \(\bar{Rc}\) = \(10.83\)
2.6 検定統計量 H を求める
もし、帰無仮説が正しければ、各水準間で順位和と平均順位はほとんど同じ値になるはずである。
これを前提として、次の数式により検定統計量 H を求める。
これにより、\(H\) = \(4.35\) となる。
ただし、同順位の組がある場合は、次の式により補正する。
\(c\) = \(.996\) となる。
\(H0\) = \(4.37\) となる。
2.7 H 検定
自由度は、\(k-1\) = \(2\) となる。\(χ^2\) 分布表によると、自由度2であれば、上側確率 \(5%\) の臨界値は\(5.99\) である。
以上により、上で求めた補正後の H はこれよりも小さいため、危険率5%で帰無仮説が採択される。すなわち、水準間の差は統計的に有意とはいえない。
3 引用文献
小野寺 孝義. (2015). 心理・教育統計法特論 (放送大学大学院教材), 放送大学教育振興会.
田中 敏, 山際 勇一郎. (1992). ユーザーのための教育・心理統計と実験計画法 - 方法の理解から論文の書き方まで, 教育出版.