心理統計法-記述統計 (2)

目次

1 はじめに

心理統計法-記述統計 (1) では、統計量 \(\bar{X},SD\) や表示方法について説明した。ここでは、求めた統計量の有意差について説明する。

2 前章からの続き

前章に引き続き同じ例題を使って説明する。前章では以下の様なところまで説明した。

表1 1人1条件の場合のデータリスト

条件1   条件2  
Name Score Name Score
A 5 J 28
E 23 K 34
C 18 G 61
F 30 I 46
B 31 D 48
H 34 J 51
I 37 M 43
K 42 L 45
N 23 O 32
S 26 T 39

例題のデータを表1に示す。

表2

項目 条件1 条件2
\(N\) 10 10
\(\bar{X}\) 26.9 42.7
\(SD\) 9.98 9.32

統計量をまとめたものを表2に示す。

下図は、平均と標準偏差を図で表したものである。

 
graph4.png
 

3 平均の有意差を分析する

表2の結果から条件1と条件2の \(\bar{X},SD\) を求めた。これを使って平均の有意差を分析する手法について以下に述べる。
まず、平均の有意差を分析する手法として、t検定と分散分析がある。その違いを下表に示す。

手法 取扱い
t 検定 2条件の平均の差のみ
分散分析 多条件の平均の差を一括処理

ここでは最初にt 検定について取扱うが、t 検定を行う際には以下のフローチャートに示すとおり手順が異なる。

 
検定.png
 
2条件の平均の差が偶然生じたものなのかどうかを確かめるのがt 検定である。
偶然ではないという結果が得られた場合、それは「有意差がある」とする。

3.1 対応がない場合

例であげているデータは「対応がない」ケースである。
「対応がない」とは、1人1条件のデータ群であり、「対応がある」とは、1人2条件以上のデータ群を指す。

3.2 対応がない場合のt 検定

表2から \(SD\) の差が大きいと言えるのか?このようなことを確かめるのが t 検定である。
言い換えれば、偶然生じた差なのかを確かめることがt 検定の意味するところである。

3.2.1 仮定

「2条件の平均の差は偶然生じたものである」と仮定して、 t 検定を行う。
\(条件1の平均 \bar{X}\) と \(条件2の平均 \bar{X}\) との間の誤差が偶然生じたものであるとすると、本来は誤差が生じないはずである。
それを式で示すと、\(\bar{X1}-\bar{X2}=0\) として表すことができる。

3.2.2 \(\bar{X1}-\bar{X2}=0\) の分布

ここで、 \(\bar{X1}-\bar{X2}=0\) と仮定したが、実際には、 \(0\) に限りなく近づくはずである。また、大きな値が出現することも有り得るだろう。
この様なケースを想定すると、以下の様な分布になることが知られている。

3.2.3 t 検定の手順

表2を使って t 検定を行う。
t 検定を行うにはt 値とdf(自由度) を求める。

3.2.3.1 t 値の計算

\(N\) が等しいので以下の公式を使う。

\begin{eqnarray*} & t = & \frac {\bar{|Xa}-\bar{Xb|}}{\sqrt{\frac{SDa^2+SDb^2}{N-1}}} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} & t = & \frac {\bar{|26.9}-\bar{42.7|}}{\sqrt{\frac{9.98^2+9.32^2}{10-1}}} \\ & = 3.471 \end{eqnarray*}

\(t=3.471\) は、平均の差の大きさが、偶然誤差の大きさの約 \(3.5\) 倍であることを示している。

3.2.3.2 df (自由度)の計算

dfとはデータ固有の指数。以下の式によりdf を求める。

\begin{eqnarray*} & df = & (Na-1)+(Nb-1) \end{eqnarray*}

上の式にあてはめて計算すると、

\begin{eqnarray*} & df = & (10-1)+(10-1) \\ & df= 18 \end{eqnarray*}
3.2.3.3 t 分布表

\(t\) と \(df\) が求まるとt 分布表より \(t 値の出現確率\) を求める。

表3 t 分布表

df t 値
17 1.740 2.110 2.898
18 1.734 2.101 2.878
19 1.729 2.093 2.861

t 分布表に \(df=18,t=3.471\) を当てはめてみると、 \(2.878\) よりも大きい値がない。
これは、偶然による出現確率が \(0.01\) 以下であることを示している。結果、有意水準に照らし合わせると、「1%以下」であることから、 \(t値=3.471\) は、理論上の偶然により1% 以下の出現確率しかもたないことが解った。

3.2.4 判定

以上により、「有意である」ことが認められた。これは、平均の差が有意であるということである。

3.2.5 論文への記載例

表2は条件1と条件2の平均と標準偏差を示したものである。t 検定の結果、条件1と条件2の平均の差は有意であった。
(両側検定: \(t(18)=3.471, p<.01\)) したがって,条件1より条件2の方がscoreが優れていると言える。

3.3 ウィルチの法による t 検定

このケースの場合は、ウィルチの法による t 検定を行う。ここでは以下に示す新たな例題を用いて説明する。
適用条件として、対応がなく、且つ、2条件の \(SD\) が等しいとみなせない場合のみ適用する。

表4

名前 性別 身長 体重 テスト 社交性
山本 180 80 80 10
鈴木 165 40 80 9
渡辺 151 45 65 8
佐藤 168 59 87 5
佐々木 171 60 97 8
山口 187 78 56 8
170 61 67 7
阿部 165 51 79 8
吉村 175 65 98 9
水野 155 43 51 7
西本 168 67 65 6
杉浦 167 70 55 5

表4に於いて、男女で身長の平均に有意差があるかどうかを調べる。

項目 男性 女性
\(N\) 6 6
\(\bar{X}\) 174.17 162.83
\(SD\) 7.301 7.476

\(男性:174.17±7.301\) , \(女性:162.83±7.476\)

次に、\(t\) 値を求める。この場合は、以下の式より \(t\) を求める。

\begin{eqnarray*} & t = & \frac {\bar{|Xa}-\bar{Xb|}}{\sqrt{\frac{SDa^2}{Na-1}+{\frac{SDb^2}{Nb-1}}}} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} & t = & \frac {{|174.17}-{162.83|}}{\sqrt{\frac{7.301^2}{6-1}+{\frac{7.476^2}{6-1}}}} \\ & = 2.4267 \end{eqnarray*}

次に、\(df\) を求めるために定数 \(c\) を求める。

\begin{eqnarray*} & c = & \frac {\frac{SDa^2}{Na-1}}{{\frac{SDa^2}{Na-1}+{\frac{SDb^2}{Nb-1}}}} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} & c = & \frac {\frac{7.301^2}{6-1}}{{\frac{7.301^2}{6-1}+{\frac{7.476^2}{6-1}}}} \\ & c = 0.48816 \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} & df = & \frac {{(Na-1)}*{(Nb-1)}}{{(Na-1)}*{(1-c)^2}+{(Nb-1)*c^2}} \end{eqnarray*} \begin{eqnarray*} & df = & \frac {{(6-1)}*{(6-1)}}{{(6-1)}*{(1-0.48816)^2}+{(6-1)*0.48816^2}} \\ & df = 15.905 \end{eqnarray*}

ここで、 \(df=15.9\) となったが、小数点以下は切り捨てで \(df=15\) となる。

df t 値
14 1.761 2.145 2.977
15 1.753 2.131 2.947
16 1.746 2.120 2.921

これにより、 \(t(15)=2.4267\) , \(.05 < p < .10\) となり、平均の差は有意傾向であることが解った。
したがって、男女の身長の平均の差には有意な傾向がある。

3.4 対応がある場合の t 検定

4 参考文献

平井明代. (2012). 教育・心理系研究のための データ分析入門. 東京図書.

小野寺孝義. (2015). 心理・教育統計法特論 (放送大学大学院教材) (新訂). 放送大学教育振興会.

寛之小島. (2006). 完全独習 統計学入門. ダイヤモンド社.

山田剛史, 村井潤一郎, & 杉澤武俊. (2015). Rによる心理データ解析. ナカニシヤ出版.

剛史山田. (2015). Rによる心理学研究法入門. 北大路書房.

著者: Satoshi Takemoto Satoshi Takemoto

Created: 2017-02-17 金 12:43

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